チューリップ

 家に帰った途端、買ってきたチューリップがつぼみから満開になった。ほんの20分くらいだったと思う。家が暖かすぎた?

 満開になったチューリップなんて初めて見た。6枚の花弁がそれぞれの方向にグワっと開いて、めしべもおしべもむき出しである。うぶな女の子だと思ったら私服は豹柄だったみたいな感じ?花を女にたとえるのはかなり気持ち悪い。女を何かにたとえるのも気持ち悪い。何とも比較されたくない。

 小さい頃、中身が怖かったのでチューリップは嫌いだった。つぼみの中は人食い植物のように見えた。おばあちゃんちの庭とも呼べない草の道に咲くチューリップを怖いものみたさで覗きこんでは後悔していた。背筋がひゅっとなるような気持ち悪さがあった。しかし、満開になってしまえば人食い植物に見えていた部分もあっけらかんとしていい。満開のチューリップは春の花というよりも南国で真夏に咲く花のようだ。

 チューリップがこんなにさっぱりした花だとは知らなかった。