夜の寄り道

 夜はひとりで上野にいた。大体21時くらいに用事が終わったが、まだ帰りたくない。上野で遅くまでやっている喫茶店があったのを思い出して寄り道をすることに決めた。

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 飲み屋がいっぱいあってガヤガヤしたエリアにある「ギャラン」。入り口横にパフェの食品サンプルが置いてあったり、看板の字体が昔の音楽番組みたいだったりしてレトロで素敵。ギャランは2階にある。オレンジ色の店内を見上げる。そこだけ時間が切り取られているようだ。店にいる人の服装も昭和っぽく見えた。そんなわけないのに。入り口前に「全席喫煙」と書いてある。私はタバコを吸わないけど、タバコが吸える喫茶店にきゅんとくる。

 中は結構混んでいた。みんなまだ帰りたくないんだろうな。それってなんかいい。

 紅茶を頼んだ。夜にお店に入ってもお酒を飲まなくていいのが嬉しい。酔わなくても夜に外にいていいんだ。夜に寄り道してもいいこと自体も嬉しい。大人になって本当よかった。

 紅茶にミルクをドボドボ淹れる。紅茶と濃度が違うミルクが花のように広がって綺麗だった。紅茶を英語でブラックティーって呼ぶの不思議だな。英語圏だとすごく濃く淹れるのかな。

 出先で本を読むのが好き。私は何の用事でもカバンに一冊本を入れている。もちろん今日も。今日持っていたのは江國香織の「とるにたらないものもの」。江國香織のものエッセイ(無形のものも含まれる)。すでに百回読んでいるが、何度読んでもしみじみと良い。江國香織いいよな〜。高貴な余裕がある。オラとは違う。だから好き。

 

 しばらく経った。俯瞰で見ると、夜の喫茶店で1人本を読む自分がクサすぎることに気づいた。急に恥ずかしくなって残りの紅茶をあおって出た。

 そのあと、帰りがてら上野公園を少し散歩した。西郷隆盛像のあたりがカップルだらけだった。全ベンチに2人組が配置されている勢いだ。ここは東京の鴨川だ……!と思った。お互いに好意があるのは分かってるけどまだ付き合ってない、みたいな感じの2人がベンチでイチャイチャしててかなり羨ましかった。キー!早く鶯谷に行け!

 煩悩を打ち消すために2駅分歩いてから帰った。