サクマドロップとおじいちゃん

 サクマドロップを買った。缶には「サクマ式ドロップス」とあるので正式名称はそちらなのだろう。見るたびに「ああ……」と悲しくなる飴だ。もう仕方ない。一回しか火垂るの墓を見たことがない私ですらこの悲しみなのだから、金曜ロードショーの度に見ている人にとってはもっとこたえるに違いない。

 何のフルーツかわからないけど透明な飴の味が好きだ。缶に描いてあるフルーツ的にレモンかな。レモンの飴とハッカの飴は同じ色をしている。透明な飴が缶から出て喜んで口に入れると思いがけなくスースーすることがある。小さい頃はハッカの飴は嫌いだった。間違って食べてしまった時はティッシュに包んで捨てていた。今は美味しさがわかるけど。

 サクマドロップとの出会いはおじいちゃんの家だった。元は仕事部屋だった2階の大きなテーブルでおじいちゃんは飴をくれた。ヴェルターズオリジナルのようにおじいちゃんにとって私は大切な存在だったろうか。

 おじいちゃんのお葬式で私はずっと泣いていた。遺影はニカニカした笑顔で、私の記憶の中のおじいちゃんだった。おじいちゃんは最後の何年かは施設にいた。施設にいるおじいちゃんはほっそりして色白で頭がツルツルだった。おじいちゃんちにいるおじいちゃんはいい感じのグレイヘアーだったのに(おじいちゃんはカツラをかぶっていた。たぶん飴をくれた時もカツラの下はツルツルだった)。

 1番上の従姉妹が弔辞を読んだ。私と同じように、従姉妹とおじいちゃんにも2人の思い出があった。私はそれを泣きながらちょっと妬いた気持ちで聞いていた。

 おじいちゃんちはおばあちゃんちと呼ぶようになった。2階は誰も使っていない。