しているあいだはたのしいし、

 ジェルネイルをオフしてきた。ジェルネイルは素晴らしいが、自力で落とせないことが難点だ。今の爪のミルキーな黄緑色はかなり気に入っていたので落とすのが惜しかった……。

 新しい色にしないのは、きたる友達の結婚式に最高のコンディションの爪にするため。 友達のぴかぴかの晴れ舞台に、私は清潔で素敵な身なりで臨みたい。今ネイルを新しくすると友達の結婚式の頃には中途半端な長さになってしまう。爪の強度も心配だし一旦更地にすることにした。

 ネイルサロンでジェルの部分をギューンと削ってもらって、2ヶ月ぶりに爪にジェルがくっついていない状態になった。「流しのしたの骨」という小説に「ボーイフレンドって素敵よね。いるあいだはたのしいし、いなくなると気持ちいい」という言葉があるが、ジェルネイルも同じだと思った。

「ジェルネイルってしているあいだはたのしいし、オフすると気持ちいい」

 「流しのしたの骨」は6人家族( 父母娘娘娘息子)の三女こと子が主人公の小説だ。私はこの小説がかなり好き。何回も繰り返し読んでいる。人生の一定の期間をカットせずに見せてくれるような物語が好きで、この小説はその点が完璧。こと子が19歳から20歳になるまでをそのまま見せてくれている。

 お茶を飲むためにやかんを火にかけた姉のそよに、こと子が「紅茶?日本茶?」と尋ねる。そよが「日本茶」と答えるとこと子は湯呑みを急須を準備する。素晴らしいシーンだ。もしそよが「紅茶」と言ったらカップティーポットを準備したのだろう。このお家ではお茶の種類に合わせた食器を使っていて、家族のためにそれを準備するのが当たり前の日常なんだなということが短い文章でよく伝わる。このシーンがなくてもストーリーには影響しないが、あると良さが増す。

 ジェルネイルをオフして気持ちがいい私は、紅茶も日本茶も同じコップで飲む。