私は丑年のおうし座である。

 干支の昔話で牛はスタートの前夜から自分のペースを見極め歩き始める。その計画的で真面目な性格はあまり反映されなかったが、最後にネズミに1位を譲ってしまうツメの甘さは私に似ている。おうし座の神話ではゼウスが白い牛に化けて美女を連れ去るが、そんな大胆さは私にはない。

  一昨日誕生日なので焼肉に行った。ラムという牛の部位を食べた。羊だと思って食べていた。どちらにせよ旨味がギュンとしていておいしかった。牛皮の財布でお支払いし、翌朝賞味期限当日だった牛乳を飲んでお腹を下した。

 21歳になって2日がたった。好きな漫画はミノタウルスの皿です。

 小さい頃、世界で一番猫が好きなのは私だと思っていて、半ば今もそれを信じている。

 おばあちゃん家に黒い猫がいて、私の一番最初に喋った言葉はその猫の名前だった。顔が逆三角形で目が緑で、決して怒らず、よく喋り、すぐ膝に乗る美しい猫だった。21歳まで生きた。ビャオビャオとしゃがれて鳴いて、お腹の部分はまだらに白髪になった。彼女が亡くなる1日前に私はおばあちゃん家にお別れの挨拶をしに行った。中学三年生の時だった。まだ生きてたのに私は涙が止まらず、彼女がビャオビャオ言って私はまた泣いた。

  その晩彼女はおばあちゃんの寝室まで出向いて挨拶をし、次の日人形みたいになってしまった。

  私は一度だけ、彼女が喋るのを聞いたことがある。「う〜〜ごはんっていったの〜〜お利口さんだね〜〜」みたいな飼い主の思い込みの感じじゃなくて人間の私に分かる言葉で喋っていた。ちゃんとした文章で「そこは寒いから下に行って早く寝なよ」みたいなことを言われた。ほかの猫が喋ったところはまだ聞いたことがない。