ばしいコー

 帰り道にコンビニに寄った。通路を目的もなく歩いていると、あるサプリのパッケージに「ブリブリ」と書かれていた。「うんち?!直接的すぎじゃない?!」びっくりして手に取った。しっかり見るとうんちのサプリではなかった。サプリには「プリプリなお肌へ」と書いてあった。恥ずかしや。字を適当に見ているからこういうことがよくある。

 2ちゃんねるで昔流行ったコピペに「人間は最初の文字と最後の文字さえあっていれば、中間がぐちゃぐちゃでもなんとなく読めてしまう」というのがあった。たとえば「ありがとうございます」が「ありごがとういざます」になっていてもそこまで違和感なく読めてしまう。私は種明かしされるまでこのコピペの字がぐちゃぐちゃの並びになっていることに気づかなかった。人間の自動補完能力はすごい。

 昨年の夏、海に行った。穴場でいいじゃん!と思って向かった海水浴場の海は茶色かった。海水浴場というより潮干狩り場のような様相。海の家も全くなく、フードトラックが一台だけ浜辺と道路の中間に停まっていた。現地でパラソルを借りればいいやと高をくくって軽装で来た私たちは太陽カンカンの下で寝っ転がった。他の家族連れはテントを持ってきていた。準備がいい。私たちにも教えてほしかった。海には小学生か、小学生の見張りの大人だけが入っていた。自発的に海で遊ぶ大人は私しかいない。小学生より泳げない私は、ギリギリ足がつくところまで進んで泳ぐでもなく浮かぶでもなく、ただ波を体にぶつけて喜んでいた。ずっとこうしていられる。スマホを持たないでも楽しむことができる自分に安心する。

 夕方になり、海水浴場の営業時間が終わった。ぼちぼち帰るかと出口へ向かうと、「香ばしいコーヒー」とのぼりが出ていた。涼しくなってきた夕方、熱いコーヒーを飲んだらさぞかし気持ち良いだろうなと思ってのぼりの近くを見回すが、肝心のお店が見当たらない。フードトラックも帰っていた。一体どこにコーヒー屋が……?

 もう一度よく見たら、のぼりに書いてあったのは「紙しばいコーナー」だった。