癖がすごい

 与えられた影響と与えた影響ではどちらが多いのか。

 人の口癖がよくうつる。今は大学の友達と同じ喋り方をしている。個性が強いとすぐうつる。素敵な人は憧れるから真似しちゃう。

 この前映画を見ていた時、良いシーンで横の彼氏が音の鳴らない拍手をしていてびっくりした。これは完全に私の癖だ。自分の癖が人にうつると「お、採用された」と思う。採用されると嬉しい。癖に限ったことではない。

 感動して拍手するのは正確には私の癖ではなく私の母の癖だ。素直でいいなと真似したらいつのまにか自分のものになっていた。社会的生き物である以上、人は完全なオリジナルではいられない。真似に真似を重ねて人間は天才画家のパレットのように複雑な色になっていく。

 パレットにいろんな色があってもいつも同じ色ばかり使う人もいる。真似して手に入れた色は本物には敵わない。もう千鳥ノブを模倣したツッコミはやめて。オタクは何かを褒める時「〇〇からしか取れない栄養素がある」と言わないで。真似を自分のものにする時はいろんな要素をちゃんぽんするのが良い。オタクの千鳥ノブがいたらもはやそれはオリジナルだと思う。

メガネ

 「メ」と「ネ」をたまに間違える。「メガネ」が「ネガメ」になったりする。なんでなんだろう。発音が似ているからか?

 メガネを買い替ねば。形がひしゃげてしまった。寝る直前までメガネをかけて気づいたら寝落ち、朝起きると枕の下から発見される。一度や二度ならずそんなことを繰り返してつるがかなり歪んだ。レンズとつるを横から見た時垂直になっているのが正しい状態かと思うが、私のはきつめの下り坂になっている。生活する分には問題ないけど、かっこ悪いから外にはかけて出られない。

 度も合わなくなってきた。メガネの中で目を細めるなんて本末転倒だ。メガネ越しに見る夜景は全ての光が滲んでいる。

 とはいえ愛着もある。丸いレンズが自分の丸い顔に調和してなかなか素敵。黒い縁が上にだけ付いているデザインで、これを選んだのは岡村ちゃんに憧れたからだ。岡村ちゃんといえば特徴的なあのメガネ。買った後、改めて画像検索したら岡村ちゃんがかけているのはハーフリムじゃなくて、黒と透明がグラデーションになっている縁のやつだったと知った。私は今まで何を見ていたの。

 結局2年くらい使っているが、つるがひしゃげていることからも分かる通り、あまり大事にできていない。岡村ちゃんとおそろじゃないから。

 実はもう次買うやつの目星をつけている(ここの文章はひしゃげメガネを外して書いている。なんだか申し訳なくて)。次はツーブリッジの細いつるのやつにする!ZoffJINSもチェックした。野暮ったさが逆にかわいい。折り曲げないようベッドではメガネをかけないように、六本木への外出時とか、レンタルのビデオ見る時とかだけかけることを徹底する。色はカルアミルク色。

 

 

サクマドロップとおじいちゃん

 サクマドロップを買った。缶には「サクマ式ドロップス」とあるので正式名称はそちらなのだろう。見るたびに「ああ……」と悲しくなる飴だ。もう仕方ない。一回しか火垂るの墓を見たことがない私ですらこの悲しみなのだから、金曜ロードショーの度に見ている人にとってはもっとこたえるに違いない。

 何のフルーツかわからないけど透明な飴の味が好きだ。缶に描いてあるフルーツ的にレモンかな。レモンの飴とハッカの飴は同じ色をしている。透明な飴が缶から出て喜んで口に入れると思いがけなくスースーすることがある。小さい頃はハッカの飴は嫌いだった。間違って食べてしまった時はティッシュに包んで捨てていた。今は美味しさがわかるけど。

 サクマドロップとの出会いはおじいちゃんの家だった。元は仕事部屋だった2階の大きなテーブルでおじいちゃんは飴をくれた。ヴェルターズオリジナルのようにおじいちゃんにとって私は大切な存在だったろうか。

 おじいちゃんのお葬式で私はずっと泣いていた。遺影はニカニカした笑顔で、私の記憶の中のおじいちゃんだった。おじいちゃんは最後の何年かは施設にいた。施設にいるおじいちゃんはほっそりして色白で頭がツルツルだった。おじいちゃんちにいるおじいちゃんはいい感じのグレイヘアーだったのに(おじいちゃんはカツラをかぶっていた。たぶん飴をくれた時もカツラの下はツルツルだった)。

 1番上の従姉妹が弔辞を読んだ。私と同じように、従姉妹とおじいちゃんにも2人の思い出があった。私はそれを泣きながらちょっと妬いた気持ちで聞いていた。

 おじいちゃんちはおばあちゃんちと呼ぶようになった。2階は誰も使っていない。

化けの皮

 化粧をしたまま2時間ほどうっかり寝てしまった。ご飯を食べたあとにうとうとするのが好きでついやってしまう。化粧を落としにお風呂へ。鏡には茶色のアイシャドウがよれて目の周りがどす黒く、口紅もハゲで広がっている自分が写っている。それでもこの腫れぼったい自分の顔が割と好きだ。

 化粧が濃いのが好きで目もまつ毛もぱちぱちに仕上げる。口紅は薄いと塗った気にならないのでいつも赤い。もはや黒いような紫のときも明らかな茶色のときもある。寝起きのメイクドロドロの顔はそれらがぼんやり薄まって赤ちゃんが親の化粧品を塗って失敗してるようだ。寝起きなので余計な考え事をしておらず表情も無垢な感じでかわいい。

 たまに、うっかり寝が2時間ですまない時もある。朝起きてまつ毛がいまだに重たく、「ア、やったな…」と顔を顰める。フラフラ風呂場に行って驚くのだが、化粧をしたまま寝て起きるといつもより顔がかわいい。朝まで寝ると化粧はほぼ落ちている(ようにみえる)。色をつけた部分は跡形もなく消えている。それなのに、すっぴんより明らかにかわいい!ファンデーションのおかげか?化粧を落とした後もなんだかいつもより肌ツヤがいい気さえする。

「な〜んだ化粧落とさなくても平気じゃん」

 忙しい時期にこれを2日くらい続けてやるだけで顎にニキビをたくさん作ることができる。そのニキビは1週間は治らない。

ア〜ビバノン❗️

 露天風呂もついているちょっといい銭湯に行った。露天風呂の寝湯が好き。寝転んで煙突から上がる煙を見ていた。仰向けのシュナウザーがねじれて空に浮かんでいくようだった。

 閉館ギリギリになり露天風呂は私1人になった。体がほぐれていい気持ち。歌でも歌いたい気分だ。檜風呂のぬるぬるするへりに腕をかけて「いい湯だなアハハン」と小声で歌い出す。………その先が出てこない。気になるので上がることにした。

思い出している

 最近は大学の時よく行った100円ショップとコンビニが一体になった店とか寝れない夜に通ったゲオの陳列などを思い出して胸をギュンとさせている。

 昔のことばかり思い出すのは良くない兆候。なぜなら今この瞬間を生きていないから。

 あ〜もうちょっとちゃんと授業に出ていればよかった。初めての彼氏ができて浮かれていた一年後期のGPAはガタガタだった。英語の授業は軒並み落とした。TOEICの補習では当てずっぽうでももう少し点数が取れるのにねと言われた。あ〜毎日友達に会えてなんなら毎日パーティーができた環境をもっと謳歌していればよかった。もっとたくさん人の家に泊まったり、人を家に泊めたりすればよかった。あ〜なんであんなにバイト適当にやってたんだろうか。というかなんであのバイトを選んだんだろうか。好きなお店で働きたい!と店長に声をかけに行ったのはかなりの勇気だったと思う。私は急に大胆なことをしでかす節がある。

 あの時こうしていればと思うことがたくさんある。

 軽音サークルに所属していた。文化祭でソラニンを四年連続で弾いた。

湯船へ

 深夜3時半。変な時間に目が覚めて一旦入浴。しずかちゃんもかくやという感じでお風呂が大好きだった数年間を経て、私は毎朝チャッとシャワーを浴びて出かける物臭人間になってしまった。ヨヨヨ…。こうして湯船に浸かるのも1週間ぶりくらい?足湯や洗い場にいる時間の方が長いが。

 湯船につかることは、体を清めたいというより心を別の場所に置きたいということだと思う。将来の心配とかそういうのはお風呂から出たあとに考えたら良い。お風呂の時間は一日のロスタイム。

 湯船は水の中が船になり、水の外が海になる。初めて気づいた時、この発想で100万リツイートや!と思ったけど箸にも棒にもかからなかった。新しい家の船は前の家の船より立派。大きいし追い焚きもできる。次は窓のあるお風呂がいい。窓付きの船なら豪華客船。