咳をしても

 寒くなったからか恋人がいない冬の寂しさが身に沁みる。長く付き合っていた人に秋に振られて1ヶ月ちょっとが経った。今年に入ってからガタガタの関係だったので仕方なかった。むしろ悪役をしてくれてありがとうとさえ思う。

 先日、別れてはじめてその人が夢に出てきた。その夢のストーリーや夢で私が感じたことを考えるにつけ、私がその人に向けている感情は恋愛から執着に変わってしまっていたんだなと思った。夢の中で私は彼に、私のために傷つけばいいのにと思っていた。夢だけど本当に情けなかった。自分の最悪さを知ってしまって、別れた時よりも落ち込んだかもしれない。

 交際年数に比例して思い出も多く、それゆえに胸が苦しくなるトリガーも溢れている。カップルを見るだけで「私にもああいう時代がありました。今は……」と卑屈になる。しかも東京にはカップルが多すぎるので卑屈になる回数も多い。

 組数が多いだけではなく、いろんなカップルがいる。雰囲気が似てても全く違くても幸せな2人組になれるんだなと思うと恋はすごい。うらやましい。でも彼らを呪ったりはしない。基本的にはみんな幸せになってねと思う。エスカレーターでケツを揉み合うカップルには幸せになってねとは思わない。「私にもああいう時代がありました」とも思わない。