髪の毛

 部屋を丸く掃いたらクイックルワイパーの両端に髪の毛がたくさんひっついていた。昨日も掃除したのになぜ。昨日も昨日で大漁だった。掃除の雑さが問題なのではない。髪が抜けすぎている。風呂場や部屋だけじゃなく、トイレにも髪の毛がたくさん落ちていた。トイレにいる時間なんてたかだか数分なのに!

 クイックルワイパーからシートを剥がす。なるべく髪の毛部分を触らないようにつまむようにしてゴミ箱に捨てる。手が不潔になった感じがするから石鹸で洗う。元は自分のものなのに落ちている髪の毛の汚さといったらない。私は頭を撫でるように髪の毛を触る癖があり、毎日何回も髪をゴシゴシ触っている。それなのに、床に落ちた髪の毛は指も触れたくないように感じてしまう。自分の一部であるときは仲間だけど、分離すると余所者になる。身勝手だ。

 でもな〜。落ちてる髪の毛ってなんかゴソゴソして嫌な感じがするから嫌なんだよな。オイルを塗ってツヤツヤになるように手間暇かけているのに、抜け落ちた髪の毛は羅生門の老婆も欲しがらないようなパサパサの一筋だ。

 ただ、毎日ある程度の髪の毛が抜けるのは問題ないらしい。代謝しているから仕方ない。私だけじゃなくみんなもそうなんだなと思うと安心する。たしかに、友人たちとホテルに連泊したとき、2泊目にして風呂場の排水口が髪の毛で詰まったことがあった。女3人もいれば抜ける髪の毛の数も相当だったのだろう。

 毎日何十本も抜けて、きっとそれと同じくらい新しい毛が生えている。私は髪が短いから1番長い部分でも1年以内に生えた毛だろう。長くて1年、それよりもっと短く抜けるものもあり、定期的に一定数が切られる。めちゃくちゃ苛烈な会社みたいだ。そう思うとかわいそうになってきた。髪伸ばそうかな。